リフォームの可能性を最大限に北海道R住宅でカタチにできた
自然派の終の棲家
■江別市・Sさん宅
■設計/ヨシケン1級建築士事務所
HP:http://www.daichinoie.co.jp/
TEL:011-641-4906
今回の事例は、リプラン北海道 Vol.90に掲載しております。
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選んだのは地域の大手ハウスメーカー。北海道らしいと、納得して建てた家
共働きをしていたSさん夫妻は、昭和51年、江別市の住宅街に建つ築10年の中古住宅を購入しました。緑豊かな93坪のゆったりとした敷地に建つその家は、三角屋根のブロック住宅でした。2人の子どもに恵まれたご夫妻は、昭和61年に建て替えを決意。新築を依頼したのは、当時、栗山町に本社を持っていた地元大手ハウスメーカーでした。
「たまたま、出張で栗山を訪ねた時に、無落雪建築の草分けともいわれていたモデルハウスを見たのがきっかけでした。北海道の厳しい冬を快適に過ごすこと、3世代で永く住まうことにこだわった実用的、かつ合理的な造りという部分が気に入りました」とSさん。「階段が一般の住宅よりもゆったりと造られ、勾配が緩やかな点も、上り下りしやすく、歳をとっても安心な感じがしたんですよ」と奥さん。
このハウスメーカーの住宅は発表された当時、北海道の住宅として先進的な提案がいくつか、ありました。アルミサッシの内側に木製の建具が2重になった三重窓、暖房は室内を石油ストーブを熱源とするペチカ1台。独特の箱型の外観で、北海道民にはよく知られていました。しかし、最近は寒さが気になってきていたと言います。断熱や工法など、その後の北海道全体の住宅性能の進化とは、方向性に違いがあったのでしょう。
とはいえ、ペチカを据えたリビングで育ち盛りの子どもたちと楽しんだこの家での団らんのひと時は、ご夫妻の大切な思い出でした。
ライフスタイルの変化で見えた暮らしの不便と不安
時は流れ、子どもたちは成長し、リビングにいるのは夫婦2人だけということが日常風景になり、働き盛りで新築をしたSさんも、今年定年を迎えました。
「不思議なもので、リビングに子どもが常にいなくなると、ペチカ1台では寒くて仕方なくなりました。特に家族の個室がある2階は、補助暖房が必要になりました」。また、加齢とともに、敷居や水まわりなどの段差も気になるように。老後を考えると、暖房やキッチンの火の始末も心配の種になってきました。
「定年になってからあわてないように、実は3年ほど前から、北海道R住宅を利用するリフォームを検討していました。何といっても、補助金を利用できるのが魅力でした。また制度に定められた住宅性能や長期保証にも信頼感がもてました」。
研究熱心なSさんは、建物の構造を生かしながら、バリアフリー化、オール電化などを行うプランを、とあるハウスメーカーと入念に打ち合わせていました。しかし突然、担当者が交代。「新しい担当の人は、北海道R住宅すら知らず、長年の打ち合わせも水の泡になってしまいました。それならゼロベースで考え直そうと、昨年の夏に工事の依頼をキャンセルしました」。
家族で、独りで。趣味の時間を楽しむ終の棲家
ご夫妻が住む住宅街は近年、建て替えやリフォームがちょっとしたブーム。リフォーム計画が振り出しに戻ったSさんはふと、散歩途中に見かけた「北海道R住宅」の看板を掲げた工事現場を思い出しました。
そこで、施工会社のヨシケン1級建築士事務所へ見積もりを依頼。「暮らしやすいように水まわりのレイアウトを変更し、無垢フローリングに珪藻土の壁など天然素材をふんだんに使った提案をしてくれました。この予算ならこのくらいしかできないという固定概念を覆すようなプランを見て、安心してお任せできると、即決しました」。
ひと冬、じっくりとプランを温め、今年3月から工事を開始。「ハウスメーカーの家は特殊だとよく言われますが、それは誤解。ほとんどの基本構造は在来軸組工法ですから、普通の木造建築と同じようにリフォームできるんですよ」と、代表の吉田純治さん。
23年風雪に耐えた屋根と構造は、Sさんの信頼に応えるように頑強なままでした。唯一、外に突出していた三重窓の周りだけが浸水で激しく傷んでいました。強度不足だった下地材も、万全を期して補強。また、気密、断熱性能を上げるための検査、手当ても入念に施し、北方型住宅ECOの基準に近い数値を実現。「補助金を活用することで、こうした目に見えない部分にしっかりと手当てができるのも北海道R住宅の良いところだと思います」(吉田さん)。
木の温もりあふれるわが家で憧れの田舎住まいを疑似体験
3ヵ月の仮住まいを経て、6月下旬に工事が終了。「工事中も毎朝、散歩がてら現場の進捗を見に来ていました。見慣れたイメージが少しずつ変わっていくのが楽しくてね」。そう語るSさんを最も喜ばせたのが、道南スギを張ったナチュラルな外観。「若い時はログハウスにも憧れていて、老後は田舎暮らしをしたいと思っていました。別荘や山小屋を思わせる外観は、まさにそんな暮らしをイメージさせてくれますね」。
生まれ変わった新居1階は、リビングに付属していた和室とペチカが取り払われ、広く開放的なLDKに。床には肌触りよく丈夫なタモ無垢のフローリングを採用。老後の暮らしを考えて、隣接する水まわりもゆったりとレイアウトされました。「水まわりが一新され、足元がフラットなので、スムーズに家事が行えるのがありがたいですね。IHヒーターは慣れるのに時間がかかりましたが、掃除が楽なので助かっています」と、奥さんも大満足。
2階の洋室にあった古い造作本棚は気密工事との兼ね合いで移動し、廊下とSさんの書斎の間仕切り壁に。両面が本棚として使えるため、膨大な蔵書もすっきりと収まりました。「若々しく、おしゃれになった外観に似合うような庭を目指して、これからはガーデニングにも精を出さなくちゃいけませんね」と、ご夫妻は顔を見合わせて、うれしそうに語ってくれました。
今回の事例は、リプラン北海道 Vol.90に掲載しております。
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■設計/ヨシケン1級建築士事務所
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