■旭川市・Kさん宅 設計/桜岡設計事務所 施工/(株)芦野組 撮影/小髙写真事務所・桜岡設計事務所
およそ40年余り家族で暮らした家。暮らしの変化とともに持て余す部分が増え、住み替えも含めて家について考えていたKさん。「私の生活スタイルに合わせた家づくりをしてくれるのでは」という思いが、桜岡設計事務所の高橋克己さんに通じ、この場所に建て替えをして住み続けることを選択しました。
当初、Kさんの家に対する想いは、「キッチンにはカウンターが欲しい」「南側に窓を」「収納は広くたっぷりと」という断片的なものでした。それらの希望に添いながら、Kさんの生活スタイルを丁寧にヒアリングして導き出されたポイントがあります。
1つ目はおじいさんから受け継いだ大切な家庭菜園。「Kさんの生活の中で、畑仕事は手間を惜しまない大切な時間」と感じた高橋さんは、それをより楽しくできることをイメージ。玄関脇には畑で採れた作物や、漬物などを収納できる食品庫、土や肥料なども保管できる大容量の物置。さらに、ポーチからすぐに畑へ出られるような動線をつくりました。
2つ目として、来客や親戚、家族の出入りが多いKさんのお宅には必要不可欠な客間。雰囲気が浮かないよう、天井の仕上げを内装デザインと連続させ、統一感を持たせた和室に仕上げています。
寝室の大きな窓からは、家庭菜園を見ることができます。「夏の収穫時期には、朝起きて外を見るたびに作物の成長が見られると思うと、今からワクワクします」と話すKさん。受け継いだ大切な土地に、住み続けるほどに親しみや愛着が増す住まいが完成しました。
1/まくら木でつくられたアプローチは、アクセントになっている赤い玄関ドアへ続く。左側の外物置は5畳の大容量
2/ポーチや外物置から直接畑に出られる動線にした
3/玄関には座って靴の脱ぎ履きができるように配慮されたベンチもある
4/通常より高めの天井は、廊下部分が一番高くなっている。リビングに入ったときの開放感が増す演出
5/床柱はヒノキ、床の間にはセンノキ。無塗装で木目が柔らかい風合いのものを選んだ、Kさんお気に入りの和室
6/機能過剰なシステムキッチンではなく、生活に合わせたフルオーダーのステンレスキッチン
7/バスルームには撥水性の良いクリア塗装を施した木材を使用。集中換気で湿気やカビの対策も万全
8/平屋ならではの揺るぎのない存在感を放つ外観。アプローチを長く取り、除雪が最小限の手間で済むようにした
■旭川市・Kさん宅
■設計/桜岡設計事務所 ■施工/(株)芦野組
■建築データ
構造規模/木造(新在来工法)・平屋建て
延床面積/99.37㎡(約30坪)(カーポート・物置含まず)
<主な外部仕上げ> 屋根/アスファルトシングル、外壁/マツ材 目透し張、建具/玄関ドア:木製断熱ドア、窓:木製サッシ(トリプルガラス)
<主な内部仕上げ> 床/2×8材、壁/珪藻土塗、天井/マツ材 目透し張
<断熱仕様 充填断熱+付加断熱> 基礎/ビーズ法ポリスチレンフォーム120㎜、土間/ビーズ法ポリスチレンフォーム50㎜、壁/高性能グラスウール16kg105㎜+105㎜、屋根/吹込ロックウール280㎜
<暖房方式> ガスによるセントラルヒーティング
■工事期間
平成26年6月〜11月(約5ヵ月)